あなたはどんな仕事がしたいですか?

 図書館で働きたい、司書になりたい....純粋な思いを大切にしながらも、それがどんな仕事か、よく知っていただきたいと思います。この一連のページがその手助けになれば嬉しいです。


 自分にあった仕事を選ぶ、ということは、迷いあり、不安あり、なかなかたいへんな作業です。今でこそ転職が気軽に考えられる時代ですが、それでもいい加減な気持ちで仕事探しをするということではないはずです。
 多くの仕事の中から、「図書館」あるいは「司書」を考えに含めているみなさんは、最初の動機として、次にあげるような仕事像を描いている方が多いのではないでしょうか。
 ・まちの図書館、学校図書館、大学図書館のカウンターでの「貸出や返却」のすがた。
 ・本を選んだり、本を整理したり....一日中、好きな「本」と関われる仕事。
 もちろんこれらは、図書館の仕事の重要な要素であることに違いありません。しかし、一つの要素にすぎない、という言い方もできます。上にあげた二つは、ほとんどの図書館に共通するすがた、といえるかもしれませんが、図書館とひとくちで言っても、その種類ごとに全く仕事が異なります。その人の適性や興味のベクトルにあった仕事場につかないと、仕事をする自分にとっても、その図書館にとっても不幸です。「こんなはずじゃなかった」ということにならないように、それぞれの図書館でどんな仕事をしているのか、その中で「司書」の役割はどんなものなのか、考えていただきたいと思います。

(1) 図書館の種類は5つ

 図書館の種類は、いろいろ分け方がありますが、いっぱんに次の5つの分け方が用いられています。業界用語では「館種」と呼んでいます。それぞれに、どんな仕事なのかも含めて説明します。
 
 公共図書館
 いわゆる「まちの図書館」は、公共図書館です。利用者層を限定せず、だれでも自由に利用できる図書館です。
 根拠法は「図書館法」です。地方公共団体、日本赤十字社、公益法人が設置する図書館とされています。ほとんどが都道府県・市町村立の図書館で、区域の地域住民のために、行政サービスとして図書館業務を行います。
 あとの「Q&A」でも触れますが、司書の資格はこの「図書館法」によって規定されているもので、公共図書館で働く専門職員の資格なのです。従って、司書資格を取得する際の講義・学習内容は、公共図書館の業務に直結するものです。資料の選択、整理、調査相談業務、児童サービスなど、専門職としてはオールラウンドプレーヤー的な素養が要求されます。また、公立図書館では、市民の税金で運営する行政サービスであるという自覚を持って、公務員として働くことになります。
 公立図書館は、さらに二つに分かれます。「都道府県立図書館」と「市町村立図書館」です。市町村立図書館は、文字通り地域に密着して市民サービスを行う、という仕事です。都道府県立図書館は、図書館の建つ地域の近隣住民には前記のようなサービス要素が付け加わりますが、むしろ、県域の市町村立図書館のバックアップ機能が中心です(「第二線図書館」と呼びます)。直接利用者に相対する仕事より、市町村立図書館の求めに応じて資料を貸し出したり、高度な調査相談を行ったりする、いわば裏方的役割を担っているのです。
 私は、公立の公共図書館の職員ですので、このホームページは「公共図書館」を中心に記述していくこととします。
 
 国立図書館
 その国の出版・言論活動を網羅的に蓄積、保存していく役割を担います。普通はその国に一つだけ存在します。
 日本の国立図書館は「国立国会図書館」です。根拠法は「国立国会図書館法」。この法律で、国内で刊行されたあらゆる出版物は、一定部数を国会図書館に納めなければならない、ということになっています。従って、国会図書館には、名目上日本のすべての出版物が保存されているということになります。それら資料群を背景に、国内の各種図書館業務をバックアップしています。また、名前から想像されるように、国会の立法活動を支援する各種調査業務も大きな仕事です。
 東京の永田町に本館があり、分館として関西館(資料や機能の分化=今秋オープン)、国立国際子ども図書館(児童向け資料専門)、さらに各省庁などに支部があります。
 国会図書館は、毎年「国立国会図書館職員採用試験」を実施して、独自に職員を採用しています。1種から3種まで試験区分があります。ここで採用された職員は国家公務員で、司書業務のほか、予算管理や庶務的事項などの事務仕事も、セクションを異動しながら担当します。
関連URL
国立国会図書館ホームページ
採用試験の情報が非常に充実しています。先輩職員による仕事の紹介や、募集要項など、基本的な情報はばっちりです。
関連図書
『国立国会図書館のしごと』
 日外アソシエーツ 1997 ISBN4-8169-1434-X \1,600
 
 大学図書館
 国立、公立、私立の大学や、研究所など、高等教育機関・研究機関の図書館、情報センターです。教官や学生の研究、学習活動を支援する目的で、専門書や学術雑誌、オンラインデータベースなど、専門情報を扱い、資料・情報提供やレファレンスサービスにあたります。また、学部、研究室などに配置される図書や雑誌などの資料の管理も担当します。
 国立大学・高等専門学校等の司書は、国立大学協会が全国7ブロックに分けて実施する採用試験に合格して採用されます。公立大学は自治体によって、私立大学は大学によって採用方法が異なります。大学図書館の専門職員になるための資格は法的には特に規定されていません。
関連URL
大学図書館員への道
国立大学図書館の現職の司書、Σ(CXIGMA)さんのページ。仕事の話、国家2種試験情報など、経験に基づいた基本情報が得られます。
国立大学協会
採用試験情報。
関連図書
 
 学校図書館
 小・中・高等学校の図書館・図書室です。根拠法は「学校図書館法」です。各教科と連携しながら、あるいは学校図書館独自に、学校教育の推進を担うセクションだといえます。学校図書館法には、学校図書館には「司書教諭」という専門の先生を置き、図書館の維持運営にあたらせるとしています。司書教諭は文字通り「教諭」であり、司書である前に学校の先生だという点がポイントです。
 法改正により、2003年度から、12学級以上の学校には必ず司書教諭を置かなくてはならなくなりました。今まで司書教諭をおいていなかったほとんどの学校が、配置に向けてどのような方策をとるのか、専任か兼務か、新規に採用するか内部捻出か、など、動きが注目されます。
 一方、司書教諭の必置規制のなかった時代から、一部の自治体や私立学校で「学校司書」という専門職員が配置されています。こちらは「教諭」というより「司書」で、先生と連携しながら教育活動の援助をするという仕事です。
 司書教諭や学校司書については、あとの「Q&A」でも触れています。
関連URL
子供の読書のホームページ
現職の小学校教諭、渡部康夫さんがつくる、学校図書館や司書教諭をめぐる話題です。
全国学校図書館協議会
学校図書館にかんする基本的な動向、資料など。刊行物の案内もあります。
関連図書
『司書教諭というしごと』
 青弓社 1999 ISBN4-7872-0023-2 \1,800
 
 専門図書館
 特定のテーマに関する資料を収集、提供したり、特定の目的を遂行するために設置される図書館、資料室のたぐいを総称して専門図書館と呼んでいます。企業や業界団体、各種機関の図書館、資料室、地方議会の図書室、博物館施設の図書室などがこれに含まれます。単科大学の大学図書館や研究機関の図書館も、専門図書館の側面を持つといえるでしょう。
 ここで働く職員は、それぞれのテーマに精通していなければなりません。求められている素養もさまざまです。研究者並みのレベルを問われることもあります。職員の採用はそれぞれにさまざまです。
 下記にあげた「専門図書館協議会」という全体組織のほか、「音楽図書館協議会」「病院図書室研究会」など、同種の図書館の業界団体も多数あります。ホームページでの情報発信も比較的活発で、興味のある方はサーチエンジンで検索してみてはいかがでしょう。中には、国際的な組織とつながりを持つところもあります。実は私も、大学の専攻の延長で、「国際音楽資料情報協会(IAML)」と、同日本支部の個人会員だったりします。
関連URL
専門図書館協議会
専門図書館の全国組織。会員機関相互の協力や研修、連携に取り組んでいます。業界の基本動向がわかります。
関連図書
『専門図書館のマネジメント』
 日本図書館協会 2000 ISBN4-8204-0022-3 \2,000
 

(2) 雇用形態がいくつかある

 正規職員、期限付き常勤嘱託職員、非常勤嘱託職員、臨時職員(アルバイト)などの雇用形態があります。公立図書館・国立国会図書館・国公立大学の正規職員は、公務員です。また、民間の人材派遣会社からスタッフを短期採用するケースも、大学図書館を中心に広がっています。
 職員の専門性、雇用形態をどのように確保していくかということは、図書館の「職員問題」として常に議論の中心にあります。図書館法には、専門職員を「司書」と規定して、養成方法や資格認定を定めているにもかかわらず、その司書を必ず配置しなければならないという条文がありません。このため、正規職員で専門職の司書を雇う制度を持つ自治体は非常に少ないというのが残念な現状です。詳しい是非論をここでは展開しませんが、専門職で正規採用される門戸が年々狭まっていくというのは、決していいことではありません。一方で、公務員として、厳しい財政状況の中、効率的に行政サービスを行っていくという課題は不可避なもので、現職の公立図書館の司書は日々、これらの問題でジレンマと格闘しながら仕事をしているといえるのではないでしょうか。
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